<講演 「地域IXの仕組みとメリット」>
講師 トリトン 中川郁夫氏
――――講演要旨―――――――――――――――――――――
○背景について
数年前からインターネットが爆発的に普及をしてきました。接続がかなり複雑な
トポロジーを形成しています。
○IXの必要性
プロバイダが増えれば増えるほどIXの必要性が増してきます。国内においては
WIDEの実験プロジェクトとしてNSPIXP1,2が設置されています。さら
には、商用のIXとしてMEX、JPIXが今年の秋から開始されます。
○地域のインターネットの現状
地域プロバイダはほとんどは大手プロバイダに接続しており、ほとんどのトラフ
ィックは東京で交換されることになります。地域内の通信も東京を経由となります。
○現状の問題点
東京依存のトポロジですね。これはトラフィックの無駄です。遅延は大きいし、
パケットロスも大きい。
もうひとつは、安全性(耐災害)ですね。関東大震災が発生したときには、富山
県に何にも事故がなくっても通信できないのです。
さらに、通信路に関する決定権が無いことでしょう。たとえばビデオカンファレ
ンスをしようとしても、東京を回らざるを得ないと、地域によっては実現できない
ことになってしまう。
○地域IXの効果としては次の事が考えられます。
1)地域内の通信は地域内で終始できる
2)地域内の通信の高速化が可能
3)冗長な経路をなくすることによる安全性の確保
4)地域の通信路は地域に決定権をもてる
→都市に依存しない通信の実現
○アブリケーションレイヤの視点
更に、今後の方向性としてアプリケーションレイヤでの視点でとらえる必要性が
あります。現在は次の問題が起きています
1)膨大なWORLD WIDE アクセス
2)WWW,FTP,NEWSなど大量データの情報の増大
3)都市と地域間のトラフィックはユーザ数に比例
実は同じデータが何度も流れているにもかかわらず、最も高価な東京間の線が使
われてしまっているのです。そこで考えられることは、APPLICATION LAYER EXCHANGE
です。地域内に大きなサーバーを置いてみんなで共有しよう。
WWWのキャッシュ
FTP などなど
○地域IXへの期待
さて、地域IXへの期待としては次のことが考えられます。
1)地域COMMUNITYの活性化
地域内の技術者の意見交換の場
2)地域型サービスの可能性
ディレクトリ、セキュリティ、認証サービスや公共的サービス
3)地域内の通信路に関する決定権
地域内での高速通信サービス
4)CATVや地域プロバイダの接続点
5)地域NIXたちあげ
6)地域ネットワークの巨大なイントラネットの構築
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<事例紹介1>
○山梨地域情報接続機構(Y−NIX)
講師 八代一浩氏
――――講演要旨―――――――――――――――――――――
まずはY−NIXの歴史を簡単に説明します。
92年10月 山梨大学を中心としたJUNET接続
94年10月 IP接続開始
TRAIN 512K
YACC 64K(AUPフリー)
96年3月 商工指導団体の接続
山梨21世紀産業開発機構
97年5月 Y−NIX設立(YAMANASHI NETWORK INFORMATION EXCHEGE)
接続組織6
支援組織15
参加組織 1)NATIONAL ISP:MESH,INFOWEB,TOKYONET
2)LOCAL ISP:TRAIN 山梨,YACC,YIN
行政の支援は、
事務局になってもらっています。
経費負担として初期費用と3年間は運営費の一部は負担してくれる事になりました。
その他の会員は、年間10万円程度負担しています。
さて、Y−NIXの概要ですが、Y−NIXに接続する組織は、必ず通信経路を
2本もっていただいています。この事によりY−NIXがこけてもだいじょうぶと
いうことになります。なお、東京がつぶれても一応はつながっていることになります。
接続モデル
基本的にはBGPをしゃべってほしいのだが、技術的に難しいためにBGPをし
ゃべれないプロバイダーさん向けに、セグメントを分けてOSPFとRIPS2を
たててあります。BGPをつかうのはけっこうたいへんですね。
トラフィック
512がそろそろ一杯になってきています。
64の方も世界中のニュースをとっているので結構いっぱいでもうたいへん
バックボーンには 90% 流れています。
地域内は10%もある。更に増えていく可能性はある。
今後の課題、問題として次のことがあります。
SUB ALLOCATION
SPECIFIC なアドレス 、 AGGREGATION が困難
BGP/OSPS での運用が困難 技術者がいるところはいいが、いないところはたいへん
COST
何でお金をまだ払わないといけないのと言われています。
SPIRIT
REGIONAL ISP の意識
インターネットを知らなくても安易にISPができてしまっている
スケジュールは次の通りです。
97/5 設立総会
97/10 稼動
展望としては
各種サーバーの配置:NEWS,NTP,MBONE ETC
REGISTRY CENTER の役割:地域ドメイン割り当て
TRANSIT の購入
YCN構想
YAMANASHI COMUNICATIONS NETWORK
県内のネットワークをシームレスに接続する
インターネット、CATV、防災行政無線
中央コリドー計画
東京、山梨、長野間を高速回線で接続
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<事例紹介2>
○東北インターネット協議会
講師 今野 幸典氏
――――講演要旨―――――――――――――――――――――
研究活動の一環としておこなっている TRIXの紹介
背景 レスポンスの低下があげられます。
災害時の相互接続停止の可能性
東京経由のため、回線は太いがディレイが多い
行政情報は県内で利用するのに困難 パケットロスが大きい
地域内の情報の利用を低下させている
地域に目をむけなくなってきている
→地域内のインターネットの相互接続をした
実際に何をやればいいのか
相互接続が良い→基礎データがない
TRIXの目的
地域内のインターネット相互接続の可能性とその問題点の検討
基礎となるトラフィックデータの収集、分析
上記に基づく地域内相互接続ネットワーク構築
運用技術の確立、経路制御技術、etc.
TRIX活動の経緯
96年5月末 TRIX研究会設立、問題点の検討開始
96年12月末 東北地域内相互接続ネットワークの構築
トラフィックデータの収拾開始
ネットワークポリシー
ルーティングは、実験参加組織が責任を持って設定、管理
実験参加組織以外とのトランジット(DEFAULTROUTEの生成)は行わない
実験参加組織以外へのトラフィックを TRIXネットワークに流さない
トラフィック解析結果
総トラフィック量
350M BYTE /DAY うち80%は NNTP によるネットニュース配送
現在の回線容量(64)で十分
NNTPは定期的に発生するので解析対象から除外する
解析結果
ニュースを流すと大変だけどそうでなければ大丈夫
各月のプロトコル比率
50%〜70%はWEBのデータである
安定した応答性能を得ることができるようになった
FUTURE WORK
地域内相互接続ネットワークの有効利用
アプリケーション連携技術
今後は自治体に働きかけて有効性を説明してがんばっていく予定である
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<事例紹介3>
○東海地域ハブ研究会
講師 鈴木 常彦氏
――――講演要旨―――――――――――――――――――――
この研究会は一昨日できたばかりである。(準備は昨年暮れから)
プロバイダ20社 40人 が参加しました。
地域IXの必要性は次のように考えます。
不合理な渋滞 混んでいるところをわざわざ通らないといけない
高い通信コスト バックボーン共有で通信コストが安くなる
研究会の趣旨
私達がハブといっているのは単にトラフィック交換するだけにとどまらないで、
地域の情報を交換したいということでハブと名付けたのです。
TKiX(東海地域ハブ)の役割としては次のことを考えています。
地域トラフィックの整理
バックボーンコスト低減
地域ISPとの各種コラボレーション
産学共同プロジェクト
プロバイダー間ML
地域ニュースの配送
相互バックアップ、機能分担
ローミング
OCNのアンバンドルサービス
地域情報サーチエンジン
共有リポジトリ
TKiXの概要(WGによる検討結果)
バックボーン
料金が安くなるよう配慮した(安かろう悪かろうではない)
ASを持っているところは少ない(2社)
AS持っていない人でもつなぐことができるかが重要
地域内IXが必要かを説明するのに、素人相手でも traceroute の記録を見せた。
これは、ずいぶんと説得力がありました。
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